宝石の鑑別書とは?
宝石の鑑別書とは、ある特定の宝石が持つ客観的な特性を、主観を交えずに記した報告書のことです。 「ダイヤモンドの鑑定書」(Grading Report)との決定的な違いは、宝石に対する格付け(Grading)が一切なされていないという点で、裏を返せば、その宝石の価値に関する記述は一切無いということになります。 宝石の鑑別書には以下に列挙するような様々な項目がありますので、一つ一つ見ていきましょう。
宝石の鑑別所・細目一覧
- 鉱物名・素材名(Species/Material)
- 宝石名(Variety)
- 透明度・色(Transparency)
- カット・形状(Shape & Cut)
- 重量(Weight)
- 寸法(Measurements)
- レポートナンバー(Report Number)
- 屈折率(Refractive Index)
- 多色性(Pleochroism)
- 比重(Specific Gravity)
- 分光性(Absorption Spectrum)
- 拡大検査(Magnification)
- 偏光性(Polariscope)
- 蛍光性(Fluorescence)
- コメント(Comments)
宝石の鑑別書・細目
宝石の鑑別書は一般的に15項目に渡って各々の特性が記載されています。
鉱物名・素材名
鉱物名・素材名とは、その宝石の鉱物学上の名称が記載されます。たとえば「ルビー」を鑑別してもらうと、「コランダム」という結果で返ってきます。「天然+鉱物名」と記載されている場合は、その宝石がカットと研磨以外の人為的な操作を受けていないことを意味しています(例:天然コランダム)。
また、何らかの人工処理が施されている場合は、その内容が併記されることもあります (例:色の改善を目的とした加熱が行われています)。
また、何らかの人工処理が施されている場合は、その内容が併記されることもあります (例:色の改善を目的とした加熱が行われています)。
宝石名
宝石名とは、ある特定の鉱物が加工され、宝石として扱われるときの名称を指します。たとえば、柘榴石(ざくろいし)の宝石名は「ガーネット」となり、コランダムの宝石名は「ルビー」や「サファイア」となります。また、何らかの特殊効果を持つ場合は、その効果を示す名称が付随します(例:クリソベリル・キャッツアイ/スター・サファイア)。なお宝石の特殊効果に関しては宝石の特殊効果をご参照下さい。
透明度・色
透明度・色とは、その宝石が透明か不透明か、また色が付いている場合はどういう色相に属しているかに関する記述です(例:透明緑色/赤色・透明石)。
カット・形状
カット・形状とは、その宝石に施されたカッティングの種類に関する記述です(例:ラウンドブリリアントカット/プリンセスカット/シングルカボションカット)。カットの種類に関しては宝石のカットをご参照下さい。
重量
重量とはその宝石の持つ重さのことです。通常は精密な電子計測器で小数点以下3の位まで計測され、単位はカラット(1カラットは200mg)で表されます。重量を表す数字の後に「刻印」という表記がある場合は、その数字が製品に刻印された名目上の重量であることを示しています(例:0.625CT刻印)。
寸法
寸法とは、その宝石の縦・横・深さをmmで表記したものです。寸法は自動計測機器で小数点以下2の位まで精密に計測されます。「省略」と記載されている場合は、鑑別書のスペースの関係上、メインの宝石以外の寸法記載が省略されたことを意味しています。「測定不可」と記載されている場合は、宝石の枠止めなどの関係上、計測できなかったことを示しています(例:5.35×4.85×2.95mm)。
レポートナンバー
レポートナンバーとは、その鑑別書に割り振られた固有のナンバーのことで、鑑別機関のデータベースに記録・保存されます。鑑別書が偽造されたものかどうかを知る際は、データベースと照合し、ナンバーが存在していれば本物、存在していなければ偽物とすぐに分かります。レポートナンバーと合わせて、その宝石の外観写真が添付されることもあります。
屈折率
屈折率とは、光が空気中から宝石に入る時に起きる屈折の度合いのことで、宝石の種類によって固有の数値を持っています(例:ダイヤモンド2.418/ルビー1.768 - 1.772)。
多色性
宝石が複屈折性(宝石の中に入った光が屈折して一方向から出て行くのではなく、複数の方向に分かれて出て行く現象)を持つとき、見る角度によって宝石の色合いが違って見えることがあります。こうした現象が観察されたとき、「多色性が認められる」、「二色」などと表記されます。
比重
比重とは、ある任意の体積の宝石と、その宝石と同体積の水の重量比率です。比重の値は宝石によって一定です。ただし、宝石が指輪などの製品に加工されている場合は比重測定が出来ませんので、「セットのため測定不可」と記載されます(例:ダイヤモンド-3.52/エメラルド-2.7)。
分光性
分光性とは、白色光線を赤から紫までの分光色に分類して示したものです。宝石の吸収した色が吸収線という形で現れますが、出現形式は宝石によって決まっています(例:クロムラインを認む)。
拡大検査
拡大検査とは、宝石用の顕微鏡で宝石内部を拡大観察し、内部に含まれる特徴的な含有物を記したものです。紛失や盗難被害にあった際、個体識別の手がかりとなります(例:液膜包有物)。
偏光性
偏光性とは宝石の持つ光の屈折特性のことです。ある特定の宝石に光を当てたとき、光が一方向から出てゆくことを「単屈折」、複数に枝分かれして出てゆくことを「複屈折」と呼びます。どちらの現象が発現するかは宝石によって一定で、これを示したものが偏光性の項目になります(例:複屈折性)。
蛍光性
蛍光性とは、宝石に紫外線を照射した時の発光現象のことです。宝石などの物質に紫外線を当てると、光のエネルギーと宝石内部の原子とが反応し、人間の眼に見える蛍光色を示すことがあります。この性質を蛍光性と呼びます(例:蛍光性を認む)。
コメント
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